Episode:1 ドライブ
「気持ちいい~」
日差しが照り付ける夏の日。
俺はつい昨日納車されたばかりの新車でドライブに来ていた。
ピカピカの新車。
外装も窓も光り輝いている。
乗り心地をじっくり確かめたかったから、もちろん一人で。
「うん、パワー、加速、ハンドリング、なかなかいい感じだ」
コースは峠を越え海沿いを回ってくるコース。
1日かけてじっくり回るつもりだ。
「今日はめいっぱい楽しむか!!」
そう言って俺はアクセルをふかした。
「だいぶ遅くなったな」
あたりはすでに真っ暗。
時計を見ればすでに日付が変わろうとしていた。
「少し眠くなってきたし、急いで帰ろう」
俺はスピードをあげた。
しばらくスピードをあげて走っていたそのとき
ドンッ!!!
何かにぶつかる音がした。
「こんな夜中に出歩く人もいないだろうし、タヌキかなんかだろ」
俺は気に留めることもなく眠気を押し殺して帰路を急いだ。
次の日
俺は車を洗っていた。
タヌキを引いたであろうフロント下部には血のような跡がついていたが傷やへこみはなさそうだ。
一通り洗い終えて車体を拭いていると、窓に無数の手形のようなものがついていた。
「俺の車が格好良すぎて子供たちが触ったんだろう」
ちょっと自慢気になりながら拭いていると、あることに気づいた。
「この手形、内側だな…」
「…っ?!」
俺は急に恐ろしくなり寝室へと駆け込んだ。
そして布団を頭からかぶり
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
そう連呼してあのときのことをひどく後悔した。
end